登山2回目の男が、屋久島の最高峰と縄文杉を15時間で歩き切った話。
2026年3月15日、日曜日。 僕は屋久島の山の中にいた。 ヘッドライト1本の明かりだけを頼りに、深夜の登山道を歩いていた。
気温3℃。 足元には雪。 周囲は漆黒の闇。
登山は人生で2回目。
この日歩いたのは、淀川登山口から宮之浦岳(標高1936m・九州最高峰)を越えて縄文杉まで行き、また宮之浦岳を越えて戻ってくる周回ルート。
YAMAPの標準コースタイムは17時間。総距離約23km。
どう考えても、登山2回目の人間がやっていいルートじゃない。
でも、やった。15時間で歩き切った。
⚠️ 本記事は無謀な登山を推奨するものではありません。
今回の挑戦は十分な準備とは言えない部分も多く、登山ガチ勢の方には怒られる覚悟で書いています。
これから登山を考えている方は、まず適切な難易度のコースから始めることを強くおすすめします。

元パーソナルトレーナー、福岡のITベンチャーで働くサラリーマッチョ。
独学で55kgのガリガリ→75kg(筋トレ歴10年)
現在はおいしいものを食べるためにゆるく楽しく週5で筋トレ継続中。
元パーソナルトレーナー時代に得た知識と筋トレ歴10年の経験を共有します。
20代|168cm|75kg
これから屋久島登山を考えている人へ(初心者向け情報まとめ)
本文に入る前に、実際に歩いてみてわかったことを先にまとめておく。 本文はその後に読んでもらえると、より楽しめると思う。
コースについて
- 今回歩いたのは「淀川登山口ルート」。宮之浦岳(九州最高峰)と縄文杉の両方を一度に攻められる上級者向けルート
- 標準コースタイム17時間、総距離約23km。一般的な縄文杉ルートは「荒川登山口→縄文杉」の往復で約10時間
- 初心者には荒川登山口ルートを強く推奨する。それでも十分すぎるくらい最高の体験ができる
3月の屋久島は冬山
- 淀川ルートの7割以上が雪道だった。朝のうちは凍結がひどくガチガチ
- アイゼンは必携。 これは本当に重要。アイゼンなしで歩けたのは快晴だったからで、運がよかっただけだと思っている
- 事前にYAMAPで直近の登山者の記録を必ず確認すること。雪と凍結の状況は記録を見れば把握できる
装備について
- シューズはゴアテックス素材の防水トレッキングシューズが必須。15時間歩いて浸水ゼロだった
- フリースは持っていかなくてもよかったけど、あった方が安心。気温3℃の山頂は風も強い。自分はバイク用の薄手のウインドブレーカーとレインウェアで寒さをしのぐことができた
- ヘッドライトは必ず持参。深夜・早朝スタートの場合は特に
- トレッキングポールがあると下山時の膝への負担がかなり変わる
補給について
- 食料は「ちょっと多いかな〜」と感じるくらい余裕を持って持っていくこと。15時間行動でギリギリなくなった
- サプリメント(BCAA・クレアチン・カフェインなど)が後半のスタミナを大きく左右した(詳細は本文に書いた)
宿について
- 今回泊まった「縄文の宿 まんてん」は登山者に超おすすめ。深夜出発の登山者向けにお弁当を用意してくれている(事前に「必要」と伝えること。深夜でもちゃんと用意してくれる)
なぜこのルートにしたか——前日まで悩み続けた話
「5秒で決まった」なんてことは全然なくて、実際は前日のギリギリまでルートで悩み続けた。
今回の旅はバイク友達3人での旅行だった。
YAMAPによれば、淀川登山口から宮之浦岳を経由して縄文杉で折り返すルートは、5時開始でも登山終了が22時半の予定になる。 22時半じゃ夜ご飯に行ける場所がなくなる。それは避けたい。
それに、疲れ果てた後半に暗い山道を下山するのは危険じゃないか——という話にもなった。
じゃあ、みんなと同じ「荒川登山口→縄文杉」の往復ルートにするか。 でも、みんなと同じことをするのはつまらない。 3人とも「普通の観光コースを歩く」という選択肢は最初から好きじゃないタイプだった。
荒川にするか、淀川にするか。
グルグルと悩んで、出した結論が「起きる時間を早めればいい」という強行突破だった。
深夜2時起き、2時半出発。それなら登山終了を18時台に持ってこられる計算になる。 ご飯も食べられる。暗い下山も最低限で済む。
後から思えば、その判断が正解だった。
登山前日・14:00 買い出し
翌日の行動食と補給用のものを買い出しに行った。
- おにぎり(一人4〜5個)
- ナッツ類
- チョコレート系のお菓子
- ドライフルーツ(マンゴー、パイナップル)
- ポテトチップス
- キャラメル
- プロテインバー
このあたりをチョイス。
自分は筋トレ10年くらいの経験から、サプリメントの力を信頼していたので、サプリメント類も持参した。
15時間行動することになるので、食料は余るくらい用意しておくべきだったと後から思う。 購入時は「買いすぎかな?」と思っていたけど、今回はギリギリ全部なくなる量だった。
登山前日・19:00 イルマーレで夕食
買い出しを終えて、夕食はイルマーレというイタリアンのお店へ。
オーナーがナポリで修行されているお店で、屋久島の中でもかなり人気の一軒らしい。
まず出てきたナポリのビールが初めてで、フルーティーで美味しかった。 鹿肉が乗ったピザ、クワトロフォルマッジのはちみつがけ、イカスミのパスタ……3人で頼みまくった。 全部めちゃくちゃ美味しかった。
スタッフが2人しかいないのにめちゃくちゃ混んでいて、最初のピザ以外はかなり待ったけど、全然気にならないくらい美味しかった。
3人で腹いっぱい食べてお会計13,000円ほど。
翌日15時間歩くことになる人間の前夜の食事として、これ以上ない内容だったと思っている。
https://maps.app.goo.gl/FCRJMbe68EXNUVbN7
前日夜・21:00 宿へ
夕食を終えて宿に戻り、夜9時に部屋の電気を暗くした。
翌朝2時起きなので5時間眠れればいい。 「登山前日に眠れるかな」と少し不安だったけど、無理やり電気を消して目をつぶっていたら9時半か10時には落ちていた。
そのまま深夜2時に目が覚めた。
前日に1つだけ仕掛けをしておいた。 スマホをベッドからできるだけ遠い場所に置いておいたのだ。 アラームを止めるためには布団から出て足の裏を床につけなきゃいけない。 それだけで、もう体は起き上がってしまっている。
これ、マジで効いた。これなしだったら絶対に起きれなかったと思う。
アラームを止めた瞬間、すぐ筋トレ用のプレイリストを流した。 激しいビートの「レッツゴー」系の曲。 眠気がスパッと吹き飛んだ。これもガチでおすすめ笑
2:00 ロビーへ
宿のロビーに下りると、お弁当が複数並んでいた。 「登山者向けのお弁当です」という案内とともに。
……え、お弁当?
チェックインのときに「お弁当は必要ですか?」と聞かれていたのだが、深夜2時半に出発する予定だったので「そんな時間に用意されるわけない」と勝手に思い込んで「いりません」と断っていたのだ。
完全に誤算。深夜2時でもちゃんと用意してくれていた。
登山前の食事はそのままスタミナに直結するので、必要ですと答えるべきだった。反省。
今回泊まった「縄文の宿 まんてん」は登山者向けの気配りが細かくて、いい宿だった。
2:30 淀川登山口へ出発
車に乗り込んで、宿から約50分かけて淀川登山口へ向かった。 (宿の予約時点では荒川登山口からスタートする予定だったから、荒川登山口の近くの宿だった)
深夜の山道はぐねぐねと曲がりくねっていて、車内でおにぎりを1個食べようとしたけど酔いそうで危なかった。 対向車はゼロ。真っ暗な山道をヘッドライトだけで走る感覚はなかなか不思議だった。
後から調べて知ったんだけど、淀川登山口は標高約1000mのところにある。 車でそこまで行けるので、実際に自分の足で登る標高差は約900m程度ということになる。
「宮之浦岳まで1936m自分の足で登るのか」と思っていたので、それを知って少し安堵した。 というか、それすら知らずに来ていたという時点でどれだけ準備不足だったかがよくわかる笑。 事前の情報収集は本当に大事だと痛感した。
3:30 淀川登山口 到着
車を降りた瞬間、想定よりも寒かった。気温3℃。 山の冷気が肌に刺さる感じで「あっ、これやばいかも」と思った。 フリースを持ってこなかったことをここで初めて後悔した。
でもどうしようもないので、持ってきた装備を全部着込んで、できる限り暖かい格好に整えた。
3人とも口々に「やばい」「暗すぎ」「怖っ」と言い合っていた。笑えるけど笑えない。
でも、ふと顔を上げると別の世界が広がっていた。
満天の星空だった。
街灯ゼロ、雑光ゼロ、標高1000mの夜空に、無数の星が降り注いでいるような密度で輝いていた。 「やばい」が「やばい!(歓喜)」に変わって、3人でしばらく空を見上げた。
こんな星空、都市では絶対に見られない。
出発前に3人で円陣を組んだ。「屋久島ファイ、おーー!」と叫んで、闇の中へ踏み込んでいった。
3:48 登山開始——山姫の話
真っ暗な山道を、ヘッドライト1本の光を頼りに歩く。
夜の登山は初めてだったけど、実際に歩いてみると思っていたより全然普通に進めた。 ヘッドライトさえあれば足元はしっかり見えるし、慣れてくると恐怖よりも静けさの心地よさが上回ってくる。 「暗いこと自体はそんなに怖くない」というのが正直な感想だった。
ただ、僕はひとつ余計な知識を持ち込んでしまっていた。
フェリーの船内に屋久島に関する本が置いてあって、暇つぶしに読んでいたのだ。 その中に「山姫」の話が載っていた。
屋久島、もっと知りたい(人と暮らし編)
屋久島には古くから山姫という妖怪の伝承があって、踵まで届く長い黒髪を持つ美しい女の姿をしているという。 山の中に現れた山姫に笑いかけられて、笑い返してしまうと血を吸われて死んでしまう——という話だ。
これを船の中で読んでしまったのが完全に裏目に出た。
暗い山道を歩きながら「今この瞬間、木の陰から山姫が笑いかけてきたらどうする?」という考えが頭から離れなかった。 そういう状況になったとして、「笑い返したら死ぬ」と知っていて笑い返さずにいられる自信が、正直なかった。 愛想笑いしてしまう可能性が十分にあった。
心の中でそんな恐怖を抱えながらも、外面上は平静を装いつつ、一定のペースで歩き続けた。
結果的に山姫は出なかった。動物の気配も一切なかった。
でも、あの「出たらどうしよう」という緊張感は今思い返しても笑える。 屋久島に行く前にそういう伝承を読むのは、ある程度の覚悟を持ってからにしたほうがいい笑
5:30〜6:00ごろ 日の出と雲海
歩き始めてから2時間ほど経った頃、東の空がじわじわとオレンジに染まり始めた。
暗闇の中を歩き続けた後に、世界に光が戻ってくるあの感覚は独特だった。 「ああ、また世界が戻ってきた」という安堵感とでも言えばいいか。 山の中で夜を越えた人間だけが知る感覚だと思う。
太陽が昇るにつれて気づいた。
雲より上にいる。
ちょうどロープを使って勾配が強めな崖を登って遠くを見ると、オレンジ色の朝日に照らされた白い雲の絨毯が広がっていた。 雲海だった。
3人とも雲海を見るのは初めてで、「うわっ、雲海や!」「本物やん!」「えっ、すごい!」と大騒ぎになった。 遠目だったのでぼんやりとしか見えなかったけど、それでも十分すぎるほど神秘的な景色だった。
しばらくすると、どこからかウグイスの声が聞こえてきた。
朝日に染まった山の中で、雲海を眺めながら、ウグイスの声をBGMにおにぎりを食べた。 標高1000m超の場所で食べる朝ごはん。これだけで「来てよかった」と思えた。
3月の屋久島は雪まみれだった
日が昇るにつれて周囲の景色がはっきり見えてきたんだけど、そこで待っていたのは衝撃の光景だった。
雪まみれだった。
一面の緑、苔むした岩と木、しっとりした幻想的な森——そういう屋久島を想像して来た僕には、完全に予想外だった。 全行程の約7割が雪道で、朝のうちは凍結がひどくてガチガチのツルツル。
「あれ、ここ屋久島だよな?」
3人で顔を見合わせて笑った。笑うしかなかった。
3時から11時ごろまでは特に凍結がひどくて、道端の草や木を掴みながら、凍っていない端っこを探して進む——という動きを延々繰り返した。
ゴアテックスのサロモンのトレッキングランニングシューズは防水・防蒸れともに完璧で、15時間歩いて浸水ゼロ。 本当に優秀だったんだけど、凍結路面だけはどうしようもなかった。
後から思えば、アイゼンを持ってくるべきだった。これが今回の最大の反省点。
3月の淀川ルートは普通に冬山だった。 事前にYAMAPで直近の登山者の記録を確認していれば絶対にわかったことで、それを怠ったのは完全に自分の落ち度だった。
ちなみに12時以降は太陽のおかげで雪がどんどん溶けて、午後は普通に歩けた。 快晴じゃなかったら絶対に諦めていたと思う。天気に本当に救われた。
サプリメントがなかったら、この登山は完走できていなかった
ここで一番伝えたいことを書く。
僕はもともと筋トレをやっていてサプリメントには日頃から親しんでいる。 このブログで何度も書いてきたことだけど、今回の登山でその効果をこれまでで一番リアルに体感した。
今回持参したのはこれ。
| サプリ | 目的 |
|---|---|
| BCAA | 筋肉の分解を防ぎ、疲労回復を助ける |
| クレアチン | 瞬発的なエネルギー補給 |
| カフェイン | 眠気・疲労感の抑制 |
| マルチビタミン | 長時間の運動で消耗するビタミン・ミネラル補給 |
| オメガ3脂肪酸 | 炎症を抑え、関節への負担を軽減 |
| キューピーコーワゴールドα | 総合的な疲労回復 |
| 塩 | BCAAとクレアチンに混ぜて携帯。発汗による塩分補給・攣り防止 |
これを行動中ずっと、適切なタイミングで補給し続けた。
3人の中で僕だけが全部持参していたんだけど、道中でみんなにもシェアした。 すると全員が「なんか効く」と言い始めた。
特に印象的だったのは後半。 足がガクガクになってきた頃、全員の歩くペースが落ちてきたタイミングでBCAAとカフェインを補給した。 するとAさんが「あれ、なんか体が戻ってきた気がする」と言い始めて、他の2人も同じ反応をした。 そのまま下山まで3人のペースは崩れなかった。
下山後に3人で口を揃えて言ったのが「サプリなかったら多分無理だったよね」だった。
登山は筋トレと同じで、体を長時間限界近くまで追い込む行為だと思う。 だからこそ筋トレで使うサプリメントの知識がそのまま使える。今回それを山の上で実証できた。
「水と食料と気合いで行ける」と思っている人ほど、後半に本当にきつくなる。
特に長時間・長距離の登山では、補給の戦略が後半のスタミナを決定的に左右する。 サプリを舐めないでほしい、とガチで思っている。 各サプリの詳細は別記事でレビューしているので参考にしてほしい。
8:30 宮之浦岳(1936m)登頂
出発から約5時間。8時30分ごろ、宮之浦岳の山頂に立った。
途中、ロープを使って下ったり登ったりする場所が何か所かあって、冒険感がすごかった。 雪道の中でそういう場所が出てくると「あ、これ本当に登山だ」という実感が湧いてくる。 「こういうの好きだな」と思いながら進んでいた。
正直なことを言うと、道は意外と整備されている場所が多かった。 人工の階段があったり、山道を保護するために作られた木道が続いていたり。 「結局は人が作った道を歩いているのか……なんかしょうもないなぁ」なんてクソみたいに舐めたことを思っていた笑。 今となってはそんなこと思えるほど余裕があった序盤が懐かしい。
山頂に着くと、先客が2人いた。少し後から3人が登ってきて、合計5人になった。
全員、靴にアイゼンをつけていた。
3人で無言で顔を見合わせた。「あ、やっぱりそれ必要なんだ」という目線が交差した。 アイゼンなしでここまで来た自分たちのことをこっそり誇らしくも思った笑
山頂は風が強くて寒かった。でも、景色が圧倒的だった。 見渡す限り、自分より低い山しかない。 ここが九州で一番高い場所なんだという事実を、景色で実感する。 朝から歩いてきた全部が、この瞬間に報われる感じがした。
山頂は風が強くて寒かったこともあり、10〜15分ほど休憩してから縄文杉に向けて歩き始めた。
宮之浦岳から縄文杉へ——今回一番危なかった下り
今回の登山で一番危険だったのは、正直ここだった。
宮之浦岳からの下りは、標高が高いぶん雪と凍結がそれまでより格段にひどかった。
しかも下りの勾配が強い。 踏み外せば登山道から外れて滑落する危険があるし、ただ転んでも怪我するリスクが十分あった。
正直、死の危険を感じた。
そこで起きたのが、仲間の一人の話だ。
彼はワークマンの防水ブーツで来ていた。 先頭を歩いていた僕がしばらく待っていても、全然降りてこない。
しばらくすると、雪まみれになったそいつがようやく現れて「ちょっと無理そうです」と言った。
顔も相当しんどそうで、正直「ここで引き返すか」という空気になった。
でも、ここまで来たら縄文杉を見たかった。
「靴を交換して、一回降りてみよう。それでダメだったら諦めよう」と言って、下山継続を選んだ。
僕がワークマンのブーツを履いた感想としては、正直サロモンとそこまで大差はなかった。
若干サロモンの方がグリップの安心感はあったけど、決定的な差じゃない。
結局はコツだと思う。
道の端っこの凍結していない部分を選んで足を置く。 左右の草木をしっかり掴みながら降りる。
確かに滑りはするけれど、注意していれば下れないことはなかった。
そのことを心が折れかけていたメンバーに伝えると「あ、自分下り方が下手だったんですね」と納得していた。
コツをつかんでからは、こけることなくスムーズに下山できた。
アイゼンなしでこの区間を通過するなら、とにかくこの2点を意識してほしい。
ルートの真ん中ではなく端を踏むこと。
そして滑りそうな場所はポールを片手だけに持ち替え、周りの草木を積極的に使うこと。 それだけで全然違う。
11:30 縄文杉 到着
正直に言うと、最初に見た時はあまり凄さがわからなかった。
淀川登山口ルートから縄文杉に近づくと、最初に拝める場所が高い位置にある展望デッキなのだ。 そこからだと縄文杉の上半分が隠れていて、遠目に太い幹が見える程度。 「でかいな」とは思ったけど、正直思っていたほどの衝撃はなかった。
でも、デッキを下りて、下段から見上げた瞬間に全然違った。
縄文杉の全体が視界に入る。 幹の圧倒的な太さ、高さ、存在感。 何千年という時間をその一本が生き続けてきたという事実が、頭じゃなく体に伝わってくる感じがした。
木の切れ間から日光が斜めに射し込んで、縄文杉を照らしていた。
神々しかった。
みんな一瞬で笑顔になった。そして誰からともなく「ああ、これを見るために来たんだ」という空気になった。
縄文杉は、わざわざ行く価値がある。写真でも動画でも伝わらない。下段のデッキから見上げて初めてわかるものだと思う。
他の登山客の方に3人の写真を撮ってもらい、15分ほど休憩してから、また宮之浦岳へ向かった。
「また登るのか」というきつさは正直あった。でも、車はあっちにある。帰るには戻るしかない。 前を向いて、歩き始めた。
12:00以降 復路——気合いと焼肉のモチベで歩いた話
12時を過ぎると、太陽のおかげで雪がどんどん溶けていった。 往路であれほど苦しめられた凍結区間も、帰りは普通に歩けた。本当に天気に助けられた。
2回目の宮之浦岳に着いた頃には、足がガクガクだった。 筋トレを10年以上続けている僕でさえ、太ももと膝とふくらはぎと足裏が全部同時に痛かった。 足を止めて立っていると、足がプルプル震えているのがわかった。
宮之浦岳山頂付近の「平石」というところで、道から外れて岩に登れる場所があった。 その先の崖からの景色が最高だった。個人的に今回の登山で一番好きな景色の場所だった。
こういった景色を見ると不思議と元気が出た。景色のパワーって本物だと思う。
2回目の宮之浦岳登頂を達成し、その後の下山はほぼ気合いだった。
膝が痛くてきつかったけど、膝が痛いということを逆に「膝気持ちいい」って言いながら進んだ。 みんなで爆笑しながら歩いた。
メンタルって地味だけど本当に大事で、ネガティブなことを口に出すと一気に雰囲気が落ちる。
沈黙の時間が続くと気持ちが落ちてくるので、なるべく声を出す。 歌を歌ったり、ポジティブな言葉を声に出したりしながら足を前に動かし続ける。 これが思いの外、効いた。
そしてもう一つ、今回の最強のモチベーション。
「22時閉店の焼肉屋に行きたい。」
それだけだった笑
18:48 下山完了
日の入りが18時25分の予定だったので、なるべく日の入り前にできるだけ進もうと、ハイペース、なんならジョギングしながら急いだ。 後半でも走れたのはサプリメントと行動食の準備が効いていたと思う。まあ焼肉のモチベも相当効いていたけど。
2026年3月15日、18時48分。淀川登山口に帰還した。
YAMAP想定17時間を、2時間巻いての完走。 日の入りの23分後。
3人で「まじでありがとう!」と言いながら抱き合った。 達成感が体の隅々まで広がっていく感覚があった。
余韻もほどほどに、みんなすぐ車に乗り込んで焼肉屋をめざした笑
20:00 焼肉れんが屋
下山してすぐ、休憩もほとんどせずに車に乗り込んだ。22時閉店、車で50分。着いたのは20時ごろ。
席に着いて、まず生ビールを頼んだ。グラスがキンキンに冷えていた。 泡がきめ細かくて、注ぎ方へのこだわりがひと口でわかった。飲んだ瞬間「このビール、レベルが違う」とわかった。
普段ビールは1杯しか飲まない僕がこの日は3杯飲んだ。3杯目まで美味しいと感じたのは人生で初めてだった。
ビールがうまい店は料理もうまい、これは本当だった。
上塩タン、カルビ、千枚刺し、レバ刺し、黒豚のウインナー、ジビエ(鹿肉)、黒豚の肩ロース……食べまくった。 ジビエの焼肉は初めてだったけど鹿肉が全然臭みがなくて最高だった。 大ライスと一緒にかき込んで、15時間分の疲れが体から抜けていく感じがした。
3人で「ほんまに俺ら、すごくね?」と言い合いながら食べた。
食べ過ぎて翌日ちょっともたれたのはご愛嬌笑。3人でお会計21,000円ほど。 値段もそこまで高くないし、文句なしで最高の打ち上げだった。
https://maps.app.goo.gl/WGsQ3BB9ZaiZVMxE7
反省まとめ
① YAMAPで直近の登山記録を読むこと 雪と凍結の状況は事前に把握できた。怠ったのは完全に自分のミス。
② アイゼンは必携(3月の淀川ルートは冬山) アイゼンなしで歩けたのは快晴のおかげと運だったと思う。
③ 宿のお弁当は「必要です」と答えること 深夜出発でもちゃんと用意してくれている。受け取れ。
④ 食料は余るくらい持っていくこと 15時間の行動でギリギリ全部なくなる量だった。もっと多く持つべきだった。
装備リスト
あくまで登山2回目の僕の構成。でも15時間歩き切れたので参考にはなると思う。
シューズ・ウェア
- ゴアテックスのサロモン トレッキングランニングシューズ(ローカット)+登山用ソックス
- 下半身:ナイキのロングランニングパンツ+ワークマン イージス(レインウェア)
- 上半身:モンベル メリノウールインナー+運動用長袖Tシャツ+ウインドブレーカー+イージス
※この装備構成は登山2回目の筆者が実際に使用したものであり、推奨装備ではありません。
特に3月の屋久島は冬山です。
登山経験や体力、天候に合わせて、必要な装備を専門店などで確認した上で準備することをおすすめします。
持ち物(10Lランニングリュック)
- 行動食(おにぎり・エネルギーゼリー・ナッツ・チョコ系)
- ヘッドライト
- トレッキングポール
- 水筒500ml
- おしりふき・ポケットティッシュ(水に流せるタイプ)
- サプリメント一式
- DJI アクション6(アクションカメラ)
アクションカメラは持っていって本当によかった。下山後に映像を見返すたびに余韻に浸れる。
事前の体力づくり 週3ペースで4〜7kmのランニング。 ポイントは本番と同じシューズで走ること。 トレッキングランニングシューズは普通のランニングシューズより重くてクッション性が薄い。 事前に履き慣らしておくと、本番で「いつも通りの感覚」で歩ける。
登山初心者が揃えるべき装備品は別の記事で詳しくまとめようと思う。
おまけ:屋久島グルメと観光
せっかくなので今回の旅で行った場所も全部まとめておく。
レストラン&カフェ屋久島 トビウオラーメンを食べた。出汁が効いたあっさりスープが美味しかった。麺は普通だったけど、トビウオ自体は淡白な味で屋久島ならではの体験として食べる価値あり。
イルマーレ 前述の通り、登山前夜に行ったナポリ修行オーナーのイタリアン。3人で腹いっぱい食べてお会計13,000円ほど。コスパ最強で最高だった。
タマカフェ フェリーまで時間があったので屋久杉自然館の近くで見つけて寄ったカフェ。ご夫婦で営む温かい雰囲気のお店で、ほうじ茶チーズケーキが絶品だった。リラックスしていたらお腹が空いてきて、結局グリーンカレーも追加した。鹿肉の出汁が使われたカレーで、これも最高だった。
屋久杉自然館 あまり期待していなかったけど、登山の後に行くと最高に面白かった。屋久島の歴史と自然が体系的に知れて、「さっきあの山の中にいたんだ」という感慨がより深まる。入館料600円。登山と合わせてぜひ。
宿 縄文の宿 まんてん、サマナホテル、どちらも最高だった。
特にサマナホテルはホスピタリティとロケーション、ビュッフェ、温泉、部屋どれをとっても最高だった。 屋久島旅行に行く人にはぜひ泊まってほしい、心からおすすめできる最高のホテルだった。
最後に
登山2回目で17時間想定ルートを15時間で歩き切って、九州最高峰に2回立って、縄文杉の神々しさを全身で受け止めた。
日の出を山の中で迎えて、雲海を見た。満天の星空の下で円陣を組んで叫んだ。
無謀だったからこそ、終わった後の達成感は一生モノだった。 この登山を経て、3人の絆は少し深くなった気がする。照れくさくて直接言えてないけど笑
装備と事前情報だけはちゃんと整えて、あとは前に進む気持ちがあれば誰でも行けると思う。
屋久島の山、本当に最高だった。
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